■ 「生理中はテストステロンで情緒不安定になる」は本当か?
SNSで、こんな投稿が大きくバズっていた。
「女性は生理中にテストステロンで満たされる。
だから情緒不安定なのは“男性化”しているからだ。」
この投稿は十数万のいいねを集め、拡散され続けていた。
しかし、生理学的には一切成立しない。
私はHPO(Human Physical Organism)──
身体を“OS(構造)として扱うモデル”から、この問題を解きほぐしたい。
■ 月経周期でテストステロンが“洪水”になる時期は存在しない
まず、基本の構造を確認する。
月経周期における三大ステロイドは以下の三つ:
- エストロゲン(E2)
- プロゲステロン(P)
- アンドロゲン(テストステロン:T)
このうち 月経中に大きく変動するのはE2とPの低下であり、
テストステロンは「安定〜やや低め」で推移する。
つまり──
● 生理中にTが急上昇する事実は存在しない
● 情緒の揺れはTではなくPの低下と炎症反応によるもの
これは医学的にも、HPO構造的にも動かない。
■ “情緒の揺れ=男性ホルモン”という誤認が生まれる構造
では、なぜこんな誤解が人気なのか?
理由は三つある。
●(1) 「男性性=攻撃性」という文化的ナラティブ
テストステロンは長年「 aggression の象徴」として語られてきた。
科学ではなく物語の産物だ。
●(2) 月経前後のイライラを説明したい欲求
Pの低下が生む神経変動は複雑だ。
だから単純化された説明(=男性ホルモン説)が受けやすい。
●(3) 男女対立構造に燃料を投下しやすい
「男性ホルモン化してるから情緒不安定」は、
ジェンダーミームとして拡散されやすい文型。
これらが組み合わさり、
科学的根拠のないミームが大量拡散した。
■ ホルモンは“善悪”で語るものではない
ここが最重要点。
- エストロゲンも
- プロゲステロンも
- テストステロンも
すべて、身体OSで必要な“機能”として存在している。
女性にもテストステロンは不可欠で、
男性にもエストロゲンは不可欠。
つまり、
「女性ホルモン=良い」
「男性ホルモン=悪い」
という分け方そのものが、
科学から最も遠いナラティブだ。
■ 私がHPOで提示した再定義
私は、性別を物語でなく構造で捉えるために、
女性を次のように定義している。
女性=卵巣・視床下部・下垂体(HPO軸)を基盤に発達した身体OSを持つ存在
この定義は、
“女性ホルモン”という曖昧語を捨て、
身体の全システム(神経・免疫・骨格・代謝・月経OS)を
整合的に扱うためのものだ。
月経の情緒変動も
“男性化”ではなく
HPO軸のリズムと炎症処理の問題として理解した方が、
よほど人間の身体に忠実である。
■ 終わりに
SNSでバズった投稿は、
科学ではなく“物語として面白い言い方”が勝つことが多い。
けれど、
私たちは自分の内分泌を
「物語」ではなく 構造で 知るべきだ。
ホルモンは善悪ではなく、
身体を動かす機能そのもの。
私はその理解を、
HPOモデルを通じてこれからも丁寧に書き残していく。

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