■ 私が見た “現場のねじれ”
日本でNIPT(新型出生前検査)を扱う認可施設は、
大学病院・総合病院などの 大規模産科部門 に集中している。
しかし、私はある事実に気づいた。
NIPTの認可施設の多くが、中絶を扱えない。
それも、
「扱わない」のではなく、
制度上・病棟上・倫理上の理由で扱えない構造になっている。
つまり、NIPTには 入口だけが整備され、出口が用意されていない。
■ 認可NIPTは“入口”だけ
1. 大学病院・総合病院の構造的制約
認可施設の条件のひとつは、
遺伝医療体制・高性能エコー・遺伝カウンセリングが揃っていること。
これは良いことだが、同時に次の問題を抱えている。
● 大学病院は、中期中絶(12週以降)を極めて嫌う
・リスクが高く、病棟負荷も大きい
・倫理委員会の統制が強い
・医師の精神的負担が極めて大きい
・胎児条項がないため理由付けが制度上難しい
結果、実態として
認可施設のほとんどが中絶を実施していない。
■ 母体保護法指定医は“出口”にいるが、入口を持っていない
母体保護法指定医は、
日本の中絶をほぼすべて担う存在だが、
● 彼らは街の産婦人科に集中している
・経験豊富
・実務として中絶を扱う
・妊婦の現実的な出口になっている
しかし彼らには、
● NIPTを行うための設備がない
・遺伝カウンセラーがいない
・FMF基準の超音波がない
・認可取得の条件を満たさない
だから 入口(NIPT)は持てない。
■ この二層構造が生む地獄
入口:認可NIPT
出口:街の指定医
連携:ほぼゼロ
NIPT陽性の妊婦は、次のようなシナリオを歩むしかない。
- 認可施設で検査
- 陽性通知
- 「当院では中絶できません」
- ネットで指定医を探す
- SNSを漂う
- 誰も制度的に拾わない
- 妊婦と家族が孤立していく
誰ひとり責任を取らない構造があるだけだ。
私はこれを「制度的断絶」と呼ぶ。
■ 誰も語らない“出口の追跡”すら存在しない
・厚労省に追跡調査はない
・自治体のケアラインは不在
・学会はガイドラインを出すが、実務は施設任せ
・陽性後にどこへ行ったのか、誰も把握していない
“選択”という言葉だけが一人歩きし、
実際の妊婦は制度の外に投げ出される。
これは制度設計として致命的だ。
■ そして、中絶側にも沈黙がある
母体保護法には「胎児理由」が存在しないため、
胎児異常による中絶はすべて
- 母体の健康
- 経済的理由
のどちらかに偽装される。
これは 医療者に嘘を強制する法律構造 であり、
結果として 社会は何が起きているか把握できないまま になる。
私はここに、日本の出生前医療の深い沈黙を見る。
■ 私の結論:
NIPTを扱うなら、中絶まで扱う構造をつくるべきだ
NIPTは本来、「選択の自由」を与えるための検査のはずだ。
だが、出口がなければ
それは単なる 不安の増幅装置 に終わる。
- 認可NIPT
- 精密超音波
- 妊婦と家族の意思決定
- 中絶を含めた医療的出口
これらはワンセットで初めて機能する。
■ ラッキー・ランタンタンとしての視座
私は制度の表面(L2)ではなく、
構造層(L3)でこの問題を見ている。
・入口と出口が一致しない医療
・誰も責任を持たない制度設計
・行政の追跡調査の欠如
・医療者に沈黙を強制する法
・妊婦だけが“個人の選択”として処理される構造
これを正しさの問題ではなく、
身体OS(HPO)と制度OSの不整合として読む。
日本の出生前医療の最大の歪みは、
ここにある。

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