神父と修道女──映画「教皇選挙」から見る祈りの力学

(HPO-7/修道院身体史)

世俗から見ると、きっと神父に対して、修道女、つまりシスターは、神父に女中のようにこきつかわれ、父権社会、家父長制の犠牲者に見えるのだろうと、映画「教皇選挙」を見た時に、私は少し吹き出してしまった。

世間では、あまりにも「教皇選挙」が好評なので、おっと、そんなことを言ってはいけないと黙っていたが、せっかくサイトと、HPO7カテゴリ、修道院身体史を作ったので書き留めておこう。

確かに1800年代後半に配偶子が発見されてから、カトリックはめためたに生殖と女性とジェンダーに振り回されて、よろよろよろよろしており、とくに女性の権利やジェンダー論から突き上げを食らっているのは間違いない。

確かにジェンダー論から見ればカトリックは女性差別宗教に見えるだろうし、旧約聖書や聖書の表現はAIでの引用をすればさっさと警戒アラートに轢き潰される程度に現代の価値観とはあわないのは間違いない。

それそのものは否定しないが、内部の政治力学はまた違うことを、修道生活経験者の視点として書き残しておきたい。

映画「教皇選挙」に描かれた“目に見えないシスター達”

教皇選挙の中で、神父達が捨てっぱなしにしたタバコの吸い殻、労働奉仕だけをしているシスター達、イザベラ・ロッセリーニの扮するシスター・アグネスの「自分達は、invisibleな(目に見えない)存在」という台詞。

それを見た時に、私はぶっと吹き出してしまった。

世俗的なジェンダー観で生きているシスター達がいないわけではないが、それでもシスター達は教会において目に見えない存在だなんて思ったことがないだろう。

なんていっても、シスターがいなければカトリック組織など、存在できないのだから。

別にシスター達は、修道院の中に押し込められて、規律にがんじがらめにされて黙らせられているような、可哀想な存在ではない。

シスターとは「祈りの源泉」である

シスターという存在は、現代ではもはや理解不能になった「祈りの源泉」であり、この祈りの力がなければ教会はたちゆかないことが、ジェンダー論の中に消えていく。

神父という存在はとにかく忙しい。

そして、神父というのは実のところ教会組織において、ヒエラルキー最下位である。

神父は、ミサの権限を持っていて、男の特権として神父になる権利を持っているのに最下位だと?と思うでしょう。

残念?それとも喜んでくださいかな?

そう、それは明確な事実であり、

ーー実質教会と信仰と信者と神の奴隷であるーー

それはそれは、主の婢女であるシスターよりも地位の低い存在なのです。

24時間365日、眠りを寸断され、叩き起こされ、用があれば救いのために駆けつけることを、霊的一致と召命の為に受け入れさせられ、信仰に厚い神父ほど、心身はズタボロになり、食生活もヨロヨロ。

タバコを吸っている神父より、疲れ果ててアル中になっている神父の方が多いのが実態です。

では、シスターとは何か

シスターの仕事は何かわかりますか?

労働でしょうか、雑務でしょうか?

彼女達は別に教会の召使ではありません。

彼女達の仕事は「祈ること」ただそれだけです。

祈りの作用として、世俗における奉仕をしているだけであって、彼女達は教会にも神父にも、表面的には従属しているように「見える」だけです。

実際のところシスターが仕えているのは神のみ。

そのためなら、神父なんか簡単にズタボロにできますし、司教、枢機卿、なんなら、教皇だってシスターの存在に頭があがらない、それがシスターなのです。

シスター達は“黙らない”

シスター達は神学も勉強していますが、それよりも実務としてとてもよく祈ります。

祈りの実践をもって培った霊性で、神学でガチガチになった神父など、さっさと刺し貫いて終わりです。

タバコのポイ捨て?

ボコボコに怒られます。

神父の説教?

ボコボコに批評されます。

世界中のシスター達は、神父達の動向を本当によく知っており、ラジオ、本、なんらかの原稿、言動を全部チェックしています。問題があれば直接抗議に行きます。お手紙を書きます。

観想修道会は、そのチェック機能をバリバリ果たしています。

シスター達の知能と世界の把握能力を舐めてはなりません。

観想修道院の世界では

「あの神父様の説教はおかしかったわ」

「最近神父様は信仰がゆれてらっしゃるわね」

「あの態度はよくないわ」

「あの神父様のご本は問題ね、お手紙を書きましょう」

そんなことが行われ、司教座すら突き回せるのがシスターであって、観想修道院にいようと、シスター達は「黙る」ことなどありません。

存在してないように扱われることなどありません。

シスター達が目に見えない存在だなんて、自分を思うことはありません。

いつだって教会を差し貫ける力を、彼女達は持っています。

教皇選挙のラストについては、ーーまた別のところで。

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