“とりあえず低用量ピル”という医療の思考停止
日本の婦人科は、月経痛・PMS・月経過多など、
あらゆる訴えに対して 第一手で低用量ピルを出しがち だ。
私はこれを長年観測してきて、次のように感じている。
月経の構造的理解が共有されていないまま、
症状だけを“消す”医療が蔓延している。
この傾向は、単なる医師の怠慢ではない。
もっと大きな「構造的原因」がある。
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① 月経痛の“原因分類”を医療側が持っていない
本来、月経痛は原因ごとに治療が違う。
- 排卵痛が主因
- 内膜が厚すぎて痛む
- 内膜症が隠れている
- 貧血で痛みが増幅されている
- 体質的に炎症が強い
しかし日本の医療現場では
「月経痛=月経痛」という一枚板の理解 が多い。
細分化されていないから、
「とりあえず低用量ピル」が万能薬のように扱われる。
医師が悪いのではなく、
そもそも 月経の分類学そのものが共有されていない社会 なのだ。
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② 低用量ピルは手軽に“効いたように見える”
低用量ピルを飲めば、多くの場合、痛みは消える。
- 排卵が止まる
- 内膜が薄くなる
- ホルモン波形が均一化する
つまりピルは 原因を問わず症状だけは消せる。
医療の側からすると、
① 一発で効く
② 患者も喜ぶ
③ 誤診してもバレにくい
→ 最強の第一選択薬になる
こうして「万能薬文化」が形成されてしまった。
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③ 内膜症・筋腫・月経過多が “隠される”
低用量ピルを漫然と飲むことで、
本来見つかるはずだった病気が“静かになる”。
たとえば:
- 内膜症 → 痛みが消えて発見が遅れる
- 月経過多 → 出血が減って見逃される
- 貧血 → 症状が出にくくなる
- 子宮筋腫 → 自覚症状が先延ばしになる
痛みが消えることで、
「治った」と誤解したまま、数年が溶ける。
この“溶ける数年”の多さこそ、
私は日本の月経医療の最大の問題点だと感じている。
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④ ミレーナが初手で出されない文化的背景
月経過多・痛み・出血量の問題に対して、
本来 ミレーナ(IUS)は強力な第一選択 である。
・内膜を薄く保ち
・出血を劇的に減らし
・痛みも抑え
・妊娠希望のない女性に最適
しかし実際には、
ミレーナはなかなか出されない。
理由は完全に「文化構造」である。
- 器具挿入への抵抗感
- 医師側の手技の負担
- 説明コストの重さ
- 日本の“とりあえず飲み薬”信仰
結果として、
本来ミレーナが適している女性たちが
延々と低用量ピルを処方され続ける。
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⑤ “40歳以上では使えない”という現実を誰も知らない
低用量ピルの使用期限は、基本的に 35~40歳で終わる。
理由は血栓症リスクだ。
しかし若い頃に「痛みが消えた」という成功体験だけを持ったまま
40代になって突然やめると、こうなる。
- 痛みが戻る
- 出血量が戻る
- 貧血が再発する
- 自分の身体仕様がわからないまま中年に突入する
私はこの構造を、
“月経医療の階段の崩落” と呼んでいる。
本来、ピルは「身体の学習装置」なのに、
学習内容が共有されていないまま年齢制限だけ到達してしまう。
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⑥ 女性たちは「なぜ痛みが消えたか」を知らずに終わる
SNSを見ると、
- ピル飲んだら超ラクになったよ!
- 生理痛ってこんなに簡単に消えるんだ!
- もっと早く飲めばよかった!
こうした声が溢れている。
しかし誰も言わない。
なぜ痛みが消えたのか。
私の身体は本当はどう動いていたのか。
HPO軸の挙動も、
自分の身体OSの仕様も、
誰も理解しないまま薬だけが飲まれて、
ただただ“楽になりました”だけが語られる。
これは 身体の自律権の喪失 でもある。
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まとめ:低用量ピル万能主義は、女性の身体理解を奪っている
私は低用量ピルを否定しない。
むしろ強く推奨する立場だ。
しかし、
低用量ピルを“初手万能薬”にしてしまう医療文化こそが問題。
原因分類をせず、
疾患を拾わず、
身体理解を与えず、
ただ症状だけを消す。
これでは女性の身体OSは
自律的に更新されないままだ。
本来、月経医療は
- 排卵痛
- 内膜の問題
- 内膜症
- 月経過多
- 貧血
- HPO波形の乱れ
これらの分類から始まり、
最適な選択肢(ミレーナ・低用量ピル・漢方・NSAIDsなど)を
個々の身体に合わせて使い分けるべきなのだ。

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