私は長い間、日本のトランス/クィア領域の言説と制度を見てきた。
しかし、観察すればするほど、次の一点が強烈に浮き上がる。
■ 日本では「もっとも危険で、もっとも深刻で、もっとも構造的な問題」が
■ ほとんど語られていない。
可視化されているように見えるテーマは多い。
しかし、“語られていない中心” が存在する。
この沈黙の中心こそ、私は扱う必要があると感じた。
それが「トランス/クィア・サバイバル」カテゴリを作る理由である。
■ 1|“語られていない中心”とは何か?
それは次のような問題だ。
● 日本だけFTMがMTFを大きく上回り続けている
(2007〜2019年まで、FTMはMTFの2〜4倍)
● 若年FTMの急増と、従来の性同一性障害像からの大幅な逸脱
(「女として扱われることが耐えられない」という語り)
● FTX(性役割の違和)にも診断書が降りる現実
(世界的には脱病理化なのに、日本は病名を要求する特例法)
● テストステロンのリスク、HPOとの非同期、身体的予後が語られない
(骨密度、卵巣・子宮、心血管、精神、性被害耐性の低下)
● MTFの論争ばかりが可視化され、FTMの生存問題は完全に不可視
(日本の言説空間構造の偏り)
● 医療・行政・学会・フェミニズム・ジェンダー学のどれも
この問題を扱うことが不可能な構造になっている
そしてもっと深いところでは、
● 女性OS(HPO)と現代日本の女性役割OSが同期しなくなっている
● そのズレが“FTMという出口”へ押し出している
この「構造の叫び」を、誰も言語化していない。
■ 2|なぜ専門領域はこの問題に触れられないのか?
これは怠慢ではない。
構造的に扱えないように進化してしまったから だ。
● 医学
性自認は脱病理化され、医学的“病気”ではなくなった。
しかし特例法は「性同一性障害」という病名を要求する。
→ 医学は“診断書発行装置”になり、
→ 現象分析を行う学問的権限を失った。
● 厚生労働省
行政OSの構造上、
「性別移行の社会的背景」を分析する担当部署が存在しない。
→ 統計は取れているが、意味づけができない。
→ FTM急増の構造分析は行政の言語体系外。
● フェミニズム
FTM急増は
日本の女性役割構造の問題 に直結してしまう。
→ 触れれば“女性の生存困難性”が露呈する
→ だから扱いづらい
MTF論争の方が言説的には扱いやすい。
● ジェンダー学
日本のジェンダー学は社会構築主義が主流であり、
身体OS(HPO)を扱う言語が存在しない。
→ “女性身体の構造負荷” を論じられない
→ FTM急増の本質に触れられない
■ 3|つまり「誰も扱えない領域」が生まれてしまった
医学でもない
社会学でもない
フェミニズムでもない
行政でもない
どの領域のOSにも属さない“構造の空白”が出来てしまった。
その空白に落ちているのが、
今まさに増え続けている若年FTMであり、
身体のまま苦しんでいる人々である。
■ 4|だから私は扱う。
理由は単純である。
✔ HPO(女性OS)から身体の構造を理解できる
✔ 社会OSとの同期ズレを読み解ける
✔ 医療・法律・宗教・身体史を横断して扱える
✔ “語ってよい言語”と“語ってはいけない言語”の境界を理解している
✔ 私はL3(構造)で物事を見る能力を持っている
日本のどの既存領域も扱えないなら、
私が扱うしかない。
■ 5|サバイバルガイドとは何か?
私は「トランスジェンダー・サバイバルガイド」を書いている。
これは理念ではなく、生存のための技術書である。
- HPOとテストステロンの関係
- 身体がどう変わるのか
- どこで危険が生じるのか
- 性被害リスクがどう変動するか
- どこまでが切り替え可能で、どこからが不可逆か
- どうすれば回復可能性が保てるか
- 若年者が迷わないために必要な情報は何か
- 医療制度のどこが“詰みポイント”となるか
これらを 身体OS×社会OS の視点から一つずつ書き起こしていく。
これは政治的立場ではなく、
生きている人々の身体を守るための技術である。
■ 6|おわりに
私は、誰かを否定したいのではない。
私は、ただこの国の “語られない中心” を見てしまった。
そして、誰も扱わないなら私が引き受けるしかない。
それが私が「トランス/クィア・サバイバル」カテゴリを作った理由である。
日本ではまだ語られていないことを、
私は身体OSから一つずつ書いていく。
――これは思想ではなく、構造の記録である。

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