プロゲステロンとは何か
プロゲステロンは、女性ホルモンのもう一つの柱である。
ただし「プロゲステロン」という名前の下には、実際には複数の構造の薬剤が存在しており、作用・副作用・適応がまったく異なる。
この違いを理解しないまま使用すると、効果が得られないだけでなく、予期しない副作用を招くことがある。
プロゲステロンは大きく2種類に分かれる
1. 天然型プロゲステロン(体内ホルモンと同一構造)
天然プロゲステロンは、身体で分泌されるものと同じ構造を持つ。
作用は生理的であり、眠気、体温上昇、落ち着きなど、妊娠黄体期の身体変化と重なる。
特にエストロゲン補充を行う更年期のホルモン補充療法では、子宮を保護する目的で天然プロゲステロンが併用される。
2. 合成プロゲスチン(薬理作用が強い・種類が多い)
合成プロゲスチンは、構造がプロゲステロンとは異なる人工的な黄体ホルモンである。
世代によって性質が大きく異なり、古いものほど男性ホルモン作用が強い傾向がある。
副作用として、むくみ、ニキビ、落ち込み、食欲変化などが出やすいタイプも存在する。
低用量ピルに含まれる黄体ホルモンはすべて、この合成プロゲスチンである。
天然型プロゲステロンが使いにくかった理由
長い間、天然型プロゲステロンは「吸収されにくい」という課題があり、経口剤として安定しなかった。
そのため世界的には合成プロゲスチンが先に普及した。
製剤技術の向上で経口天然プロゲステロンが登場し、現在のホルモン補充療法では第一選択となりつつある。
合成プロゲスチンは「目的に応じて設計されたホルモン」
合成プロゲスチンは、薬剤ごとに目的が異なる。
・避妊(排卵抑制が強い型)
・子宮内膜症、月経困難症の治療
・男性ホルモン作用を抑える抗アンドロゲン型
・むくみを抑えたい人向けのタイプ
・ニキビが悪化しやすいタイプ、逆に改善しやすいタイプ
このように、名称の響きが似ていても作用は全く異なる。
整理すると
天然プロゲステロン
→ 身体に近い作用、眠気や体温上昇など生理的。更年期HRTで重要。
合成プロゲスチン
→ 強い薬理作用。種類によって効果も副作用も全く違う。低用量ピルはすべてこちら。
目的に応じて使い分けが必要であり、同じ「女性ホルモン」だからと自己判断で選ぶと失敗しやすい。
現代の問題:個人輸入市場での誤用
日本では個人輸入代行を介して、天然型と合成プロゲスチンが区別されず「女性ホルモン」と一括で流通している。
そのため次のような誤用が多い。
・更年期症状に向かないプロゲスチンを飲んでしまう
・PMSを悪化させるタイプを選んでしまう
・強い抗アンドロゲン作用を無自覚に摂取する
・精神症状が強いプロゲスチンを選んで不安定化する
プロゲステロンは一つではない。
身体の設計であるHPO軸に沿って理解することで、初めて安全な選択ができる。

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