――最高裁判決後に残された”制度の空白”を解説する
■ はじめに
日本の特例法は、
「性別移行の入口」ではなく
「すでに移行した人の最後の戸籍調整」を目的とした道徳法だった。
にもかかわらず、いつの間にか
戸籍変更=性別移行のスタート
という歪んだ認識が広まり、
制度全体が逆回転を始めた。
さらに2023年の最高裁判決で
手術要件が違憲となり外観要件にも違憲性が示され、
特例法の”根本前提”が消滅した。
この結果、
国家が医療ケア・制度整備を行う根拠すら失われつつある。
この記事では、
どこで何が歪み、
なぜ制度が崩壊しつつあるのかを整理する。
■ 1. 特例法に存在した”5つのゲートキープ”の素の姿
以下が旧特例法に存在した条件の”生の羅列”である。
(表を使わず、ルールそのものを記載する)
- 2人以上の医師がGIDと診断すること
- 18歳以上であること
- 婚姻していないこと
- 未成年の子がいないこと
- 生殖腺がない、もしくは生殖能力を永続的に失っていること
- 変更後の性別と近似した外観を持つこと(外観要件)
これらは本来、
「すでに移行を終えた人」を戸籍調整で救うための条件だった。
■ 2. このゲートキープは”人によって作用が違う”
若年層に強く作用したのは
・診断
・年齢
・生殖不能要件
・外観要件
既婚デビュー(40〜60代)の当事者に強く作用したのは
・婚姻要件
・子の要件
・外観を含むほぼすべて
つまりゲートキープの”負荷”は完全に人によって異なっていた。
■ 3. 誤解されがちな点:
医療アクセス難(ジェンクリ不足、ホルモン処方難民など)はゲートキープではない。
これは単なる医療インフラ欠陥であり、
私が奈良県で睡眠外来がなく大阪に通ったのと同じ構造の問題。(でもこれは辛いよね、本当に分かる。辛さは理解しているよ)
■ 4. 特例法の本来の目的は「戸籍の後追い調整」だった
本来の流れはこれだけ。
・すでに性別移行して生活している
・すでに手術が済んでいる
・生活実態も見た目も移行後になっている
・でも戸籍だけが旧性別のまま残っている
・その矛盾を”最後に”解消する
これが特例法の役割だった。
しかし実際には、
「性別移行のスタート地点」と誤解され、
多くの当事者が
・手術を望まないのに手術へ追い込まれ
・外観整形を戸籍のために強いられ
・人格の否定に近い形で”形作り”を求められた
これが 制度の最大の歪み だった。
■ 5. 2023年最高裁が破壊したものの正体
最高裁が判断したことは次の通り。
・生殖不能要件(手術要件)は違憲
・外観要件も違憲性が極めて高い
つまり、
特例法を支えていた
「身体の状態」と「法的性別」を紐づける構造が
憲法上許されないと判断された。
結果として、
特例法は目的を果たせない法になった。
■ 6. ゲートキープが無効化されるとどうなるか
ここが最重要ポイント。
ゲートキープが壊れると、
国家が次のことを行う”根拠”が同時に消える。
・トランス医療の整備
・ホルモン治療の安全管理
・骨密度や血栓リスクの長期追跡
・指定医制度の構築
・医療費の公的補助
・若年移行者の保護体制
・海外の医療データの輸入と解析(タイ・英国・オランダなど)
理由は簡単で、
特例法はもともと「公的介入」と「戸籍調整」が交換条件だったため。
交換条件が壊れた以上、
国が介入し続ける理由もなくなる。
■ 7. アクティビストの矛盾
アクティビストは次のような要求を同時にしている。
・要件をすべて廃止しろ
・でも医療は手厚く整えろ
・保険適応しろ
・社会的包摂をしろ
・女湯やトイレを使わせろ
・子どもにもブロッカーを使わせろ
しかし制度的にはこうなる:
ゲートキープを全部消す
→ 国家があなたの身体へ関与する根拠が消える
→ 国家は医療整備を行う必要も義務も失う
つまり
「要件ゼロ+権利だけ全部」はあり得ない。
これを理解している団体がほぼゼロというのが致命的。
■ 8. このままでは”無法地帯化”する
最高裁後の日本は次の状態に入った。
・戸籍変更がほぼ”自由化”に近づく
・医療は制度として整備されていない
・誰も副作用を追跡しない
・若者の移行を保護する仕組みもない
・成人の移行を安全に管理する手順もない
・医療者は責任を負わされるだけでインセンティブがない
・国家が整備する根拠が消えている
これは世界でも例がないレベルの危険な状態。
私が感じている、
「この先、本当にヤバい」
というのは論理的に正しい。
■ 9. これから当事者団体が”必ずやらねばならないこと”
私がが示した方向性が唯一現実的である。
・医療トレース制度を作る
・歯科矯正のように”レセプト請求方式”で追跡できる仕組みを作る
・クロスホルモン指定医制度を作る
・若年層の保護ガイドラインを作る
・タイ・英国・オランダ・スウェーデンのデータを買い、研究する
・厚労省とGID学会に制度設計の主導権を与える
・活動の軸を「道徳」ではなく「医療の安全」に切り替える
これをしなければ、
日本のトランス医療は完全に崩壊する。
■ 10. まとめ(羅列版)
・特例法は「最後の調整」であり「最初の通過点」ではなかった
・ゲートキープは人によって負荷が違う
・最高裁判決で法の前提が消えた
・国家が医療を整備する根拠も同時に消えた
・アクティビストはここを理解していない
・制度は無法地帯化しつつある
・唯一必要なのは医療トレース制度とデータ整備
・理想論や道徳ではなく”公衆衛生モデル”に転換すべき

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