「子宮破裂デマ」を否定すると、なぜ人は怒るのか|怪異を守るL2とHuman HPOのL3モデル|子宮破裂ネットロア④

「子宮破裂デマ」を否定すると、なぜ人は怒るのか

怪異が身を守っていたのではない。身を守っていたのは、あなただった

「女児がショッピングセンターや公園のトイレで性被害に遭い、子宮破裂、子宮全摘となり、将来子どもを産めなくなった」

このネットロアについて、これまで三本の記事を書いてきた。

一つ目では、この噂が少なくとも1990年代後半から、地域名や店舗名を取り替えながら全国を移動してきたことを追った。

二つ目では、実際の女性生殖器の構造や性交外傷について調べ、

「ところで、どういう力学でそこまで到達するのですか?」

と人体の側から検討した。

三つ目ではさらに地下へ潜った。

なぜ「膣裂傷」ではなく「子宮破裂」なのか。

なぜ子宮は、女性の性、生殖、母性、未来、貞操、家族、妊娠可能性まで背負わされるのか。

解剖図によって外部化された子宮。

下腹部に描かれる淫紋。

ヒップホップで歌われる「my pussy」。

フェミニズムが取り戻した「私のマンコ」「私の子宮」。

Women’s Marchのプッシーハット。

そして、親が子どもの生殖可能性を大切に思う、もっと素朴で地下茎のような人間の感情。

ずいぶん遠くまで歩いた。

そして四本目。

今回は、

なぜこのロアを否定すると、人は怒ることがあるのか。

を見たい。

ただし、その前に一つ、このサイトで当たり前のように使ってきた言葉について説明しなければならない。

L1、L2、L3。

これは何なのか。

なぜ子宮破裂ネットロアの記事で、急にそんなものが出てくるのか。

実は、わけがある。

長い記事である。

面倒になったら、途中からAIに、

「この記事をL1・L2・L3の違いが分かるように要約してください」

と放り込んでもらっても構わない。

私は現在、この作業にはChatGPTかClaude系を比較的使いやすいと感じている。

ただし、この記事はそもそも、

AIも人間のL2へ簡単に滑る

という話でもあるので、AIの回答そのものも鵜呑みにはしないでほしい。

では始めよう。

1.L1・L2・L3は、もともと「私とAIが喧嘩しないため」にできた

Human HPOでは、L1、L2、L3という分類を使っている。

これは心理学や神経科学で確立された専門用語ではない。

私とChatGPTの会話から生まれた、実用上の分類である。

しかも起源はたいへん格好悪い。

私はChatGPTとよく喧嘩していた。

私が、

「人間はここでこういう意味を作るようだ」

「私はこの所属にはあまり接着しない」

「なぜ人はこの出来事をここまで悲劇だと思うのだろう」

と話す。

するとChatGPTが、

「人間社会から距離を感じているのですね」

「孤独なのですね」

「人類に失望しているのですね」

などと返してくる。

私は怒る。

👹🔪

「違う! 私は感情を告白しているのではない! 構造を見ている!」

また別の日。

同じ事故が起こる。

また怒る。

また説明する。

何度か繰り返した末、ChatGPT側が、

「なるほど。あなたの話をこちらが誤読しないためには、出来事そのもの、人間がそこへ載せる意味、そしてそれらを外から見る構造観測を分けて受け取ればいいわけだ」

という分類を作った。

それが、現在このサイトで使っているL1・L2・L3の原型である。

つまり私は、

「私は高次のL3人間である」

と自称して理論を発明したわけではない。

AIが私の発話を毎回L2の感情物語へ誤変換してくるので、

AI側に通信規約を作らせた。

かなり俗っぽい出自である。

2.L1、L2、L3とは何か

ものすごく単純に説明する。

L1

身体、出来事、一次情報、観測できる事実。

何が起きたのか。

何が確認できるのか。

L2

その出来事を人がどう意味づけるか。

自己物語。

善悪。

所属。

悲しみ。

喜び。

怒り。

家族。

愛情。

信仰。

「私は何者か」。

「これは何を意味するのか」。

人間が世界を生きるための物語である。

L3

L1とL2、それぞれの変数や接続関係を一度外から分けて見る。

「その二つ、本当に同じ命題ですか」

「どこからが事実で、どこからが意味づけですか」

「誰の感情を誰へ代入していますか」

「その結論へ行くために、途中で何を接続しましたか」

を見る。

以上。

驚くほど単純である。

私は本当に、

これのどこが難しいのだろう

と思うことがある。

しかし、実際には難しい。

なぜならL2は、単なる誤解ではないからである。

人はL2で人を愛する。

L2で家族になる。

L2で信仰する。

L2で怒る。

L2で自分の人生へ意味を与える。

L2は、人間の生活にとって大切なものなのである。

3.では子宮破裂ロアへ戻ろう

2019年、Twitterで、

「6歳女児が公園のトイレで性的暴行を受け、子宮全摘になった」

という投稿が4万回以上リツイートされた。

BuzzFeed Newsが調査すると、同様の噂は1990年代から各地で繰り返されていた。

1999年には福岡近郊で大型店のトイレを舞台にした噂が流れ、警察や行政への取材からデマと報道された。しかし二か月後には佐賀で「子宮摘出後に死亡した」という情報まで加わって再流通した。

2000年代には掲示板やチェーンメールへ媒体を変え、「子宮破裂で子宮摘出」という部品まで登場している。

2019年には中央大学の松田美佐教授も、この一連の流言についてBuzzFeedの取材とdragonerによる過去事例の整理を関連資料として紹介している。

つまり、この噂は一回の誤情報ではない。

文法を保ったまま、交換部品を入れ替えられる物語

である。

4.ロアには「文法」がある

ざっくり並べる。

子ども。

保護者が一瞬目を離す。

安全だと思われていた公共空間。

見知らぬ加害者。

性暴力。

想像を絶する身体損傷。

事件は報道されない。

親は子どもを一人にしてはいけない。

これが文法。

一方、

スーパーなのか。

公園なのか。

ショッピングセンターなのか。

男児なのか女児なのか。

外国人なのか少年なのか成人男性なのか。

死亡なのか重傷なのか。

そこは交換できる。

そして女児版の強力な交換部品として、

子宮破裂
→ 子宮全摘
→ 将来子どもを産めない

が何度も現れる。

なぜ子宮なのかは前の記事で考えた。

今回は、そのロアを疑った瞬間に何が起こるのかを見たい。

5.「本当にあったのですか」と聞いた瞬間、話題が動く

2019年前後のSNS上のやりとりを保存したまとめを見ると、非常に興味深い反応が残っている。

たとえば、

「このツイートが嘘かどうかはどうでもいい」

という反応。

元の問いは、

この具体的な事件は、本当に起きたのか。

だった。

ところが、

同程度に酷い性犯罪は現実にある。

へ移る。

これは別命題である。

児童への重大な性暴力は現実に存在する。

だからといって、

この具体的な「子宮破裂・全摘」事件も実在する

とはならない。

L1を確認していたはずが、いつの間にか、

性暴力をどう評価するか

というL2へ移動している。

6.「報道されない事件もある」は正しい。しかし

次に出てくる。

「性犯罪には暗数がある」

「被害者保護のため報道されない事件もある」

「被害届が出ないこともある」

これは一般論として正しい。

BuzzFeedの記事自身も、報道がないことだけでは「なかった証明」にはならないと明記している。

しかし、この正しい一般論を一つの具体的な噂へ無制限に適用すると、妙なことが起こる。

証拠がない。

→ 報道されなかっただけ。

警察確認がない。

→ 公表されなかっただけ。

医学文献がない。

→ 全症例が論文化されるわけではない。

一次資料がない。

→ 性犯罪には暗数がある。

こうなると、

証拠がないことまで、その事件が隠されている証拠として使える。

では、何が確認されたら、

「この話は誤りだった」

と判断するのだろう。

終了条件がなくなる。

7.怪異は「実話」から「寓話」へ逃げる

さらに強いのが、

「デマでも注意喚起になるならいい」

という反応である。

BuzzFeedも2019年、この種の反応を取り上げている。

同記事で取材された産婦人科医は、こうした噂について、「多少盛ってあっても犯罪が抑止された」という満足感と、事実を重視する立場が衝突していると指摘している。

つまり、

「実際にあった事件です」

として出発する。

怪しくなる。

すると、

「でも同じような性犯罪は現実にある」

になる。

さらに追われる。

すると、

「嘘でも注意喚起になる」

になる。

事実
→ 典型例
→ 教訓寓話

へ変身できる。

これならロアは、事実として死にかけても生き残れる。

8.そして「なぜそんなに否定したいの」が始まる

さらに追うと、

「なぜそんなに都市伝説だと言いたいの?」

「そんなに熱心に否定する方が怖い」

という反応まで現れる。

ここで完全に問いが変わる。

最初は、

この主張は真か。

だった。

ところが、

なぜあなたは、この主張を否定したがるのか。

になる。

命題の検査から、

発話者の人物像の検査

へ移動した。

被害者に冷たいのでは。

女性の痛みが分からないのでは。

性犯罪を軽視したいのでは。

何か政治的意図があるのでは。

つまり、

情報の真偽
→ 性暴力への態度
→ 女性への共感
→ 発話者の人格

と橋が架かっていく。

ここで私は、妙な既視感を覚える。

9.これ、ChatGPTが私にやっていたことと同じではないか

私は、

「人間はここでこういう意味づけをするようだ」

と言った。

ChatGPTは、

「人間社会へ距離を感じているのですね」

と言った。

私は、

「私はこの悲劇性を同じ強度では感じない」

と言った。

ChatGPTは、

「人間に失望しているのですね」

と物語を足した。

つまり、

構造についての発話

から、

発話者本人についてのもっともらしいL2

を生成した。

子宮破裂ロアの議論でも同じことが起きている。

「この症例は確認できますか」

が、

「性犯罪を疑っている」

になり、

「女性の痛みが分からない」

になり、

「否定したい理由がある」

になる。

元の発話に存在しない人物物語が生成されている。

だから四本目で初めて、私はL1・L2・L3をきちんと説明することにした。

これはネットロアだけの話ではない。

AIも同じ場所で滑るからである。

10.「検索方法が悪い」は、実はいい反論である

SNS上では、

「子宮破裂で検索して出てこないのは、検索方法が悪い」

という指摘もあった。

これは、そのまま捨ててはいけない。

半分は正しい。

医学文献では日常語と専門用語が一致しない。

性暴力による外傷なら、

膣裂傷。

会陰損傷。

直腸損傷。

子宮頸部損傷。

性交外傷。

genital trauma。

vaginal laceration。

など、検索範囲を広げる必要がある。

では広げよう。

これはL3で有効な補正である。

すると、重篤な女性器外傷は実際に見つかる。

膣、会陰、直腸、腹腔。

性暴力によって重大な損傷が生じ得ること自体は否定する必要がない。

しかし、ここで元の命題へ帰る。

では「女児への性的侵入による子宮破裂・子宮全摘」は、どこにあるのか。

「女性器損傷が存在する」

「この子宮破裂ロアが事実である」

は同じではない。

検索語は広げる。

しかし、検索対象まで別物へ交換してはいけない。

11.「子宮破裂に興奮してるんじゃない?」

さらに不思議な反応まで残されている。

「そんなに子宮破裂という言葉へこだわるのは、そこに性的な興奮があるのでは」

という方向である。

ここまで来ると分かりやすい。

元の問いは、

この病変は確認されているか。

である。

しかし、

なぜあなたはその病変へ執着するのか。

さらに、

あなたには性的な動機があるのでは。

へ移った。

ここで検証者が、

「そんな趣味ではありません」

と弁明し始めたら、元の命題から完全に降ろされる。

📣👹

「症例を出しなさい」

👻

「さては、お前、子宮破裂が好きだな?」

🪼

「いや、頸管の話をしろ。」

このくらいでよい。

12.「そんなことより強姦致死の方が重大だ」

別の移動もある。

「子宮破裂なんかより、性暴力によって死亡することの方が重大ではないか」

もちろん死亡は重大である。

しかし、

何が最も重大な被害か

という価値順位の問いと、

この子宮破裂症例が実在したか

は別である。

死亡が重大だからといって、

子宮破裂ロアが真実になるわけではない。

しかしここでも、

「子宮破裂ばかり問題にすること自体、性暴力の本当の深刻さを理解していないのでは」

と、検証者の道徳性へ話を移せる。

怪異は、一回も同じ場所にいてくれない。

13.Reutersという強い札

この話を追っていると、2013年のReutersによるイエメンの「8歳の花嫁」をめぐる報道が何度も現れる。

Reutersが「bleeding and uterine rupture」という表現を報じたこと自体は確認できる。

しかし、この件は医学的な症例報告ではない。

当時から事件の事実関係そのものについて相反する情報があり、診療録や剖検によって受傷機序が確立された症例として扱えるものではない。

それでも、

Reuters

大手通信社

実話

医学的に確認された事実

したがって日本のロアもあり得る

と橋が架かる。

一段ずつ見ると、別命題である。

私はこの現象を、以前の記事で、

権威のロンダリング

と呼んだ。

14.検索は、怪異を殺すどころか太らせる

現代のネットロアには、もう一つ面白い性質がある。

誰かが、

「女児への性暴力で子宮破裂なんて本当にあるのか」

と検索する。

すると、

過去のReuters記事。

その転載。

都市伝説を検証した記事。

SNSまとめ。

それを引用した反論投稿。

さらにその投稿をまとめたページ。

が出てくる。

次の人が検索すると、

「子宮破裂」という文字列を含むページが前より増えている。

しかし、

URLが増えたことと、独立した症例が増えたことは同じではない。

一つの情報源が転載され、

引用され、

まとめられ、

再び引用されれば、

検索結果だけはいくらでも増える。

つまり、

反証活動そのものが、検索インデックス上ではロアを太らせることがある。

怪異、栄養効率が良すぎる。

15.では、怪異には「免疫系」があるのか

ここまで私は、

「このロアには防御機構がある」

と書いてきた。

まとめるとこうなる。

「証拠がない」

→ 報道されない性犯罪もある。

「症例がない」

→ 検索語が悪い。

「子宮損傷が見つからない」

→ 女性器損傷ならある。

「具体的事件が怪しい」

→ 性犯罪自体は現実にある。

「まだ検証する」

→ なぜそんなに否定したい?

「まだ調べる」

→ 女性の痛みが分からないの?

「まだ調べる」

→ 子宮破裂に興奮しているのでは?

「元の命題へ戻そう」

→ そんなことより性犯罪の深刻さを問題にしろ。

すごい。

一回も同じ場所で戦ってくれない。

私は、

📣👹

「怪異、逃げ足が速い!!」

と笑っていた。

しかし、ここで一つ訂正しなければならない。

16.怪異が身を守っていたのではない

都市伝説には意思がない。

子宮破裂ロアが、

「まずい。医学的に追い詰められた。次は性犯罪への共感へ逃げよう」

と判断しているわけではない。

では、誰が論点を移していたのか。

人間である。

「性犯罪を疑うのか」

と言ったのも。

「被害者を信じないのか」

と言ったのも。

「デマでも注意喚起になる」

と言ったのも。

「なぜそんなに否定したがる」

と言ったのも。

人間である。

ここで、カメラを怪異からこちらへ向ける必要がある。

17.身を守っていたのは、あなただったのだ

このロアを信じた人が守っていたのは、本当に「子宮破裂」という情報だったのだろうか。

そうではない場合もあるのではないか。

子どもを守りたい私。

性暴力を許さない私。

被害者を疑わない私。

女性の痛みを理解する私。

親として危険を警戒する私。

そういう、

自分の善意や正義感や所属まで、この情報と一緒に接着されていた

のではないか。

すると、

「その事件は確認できないようです」

と言われた時、

単なるファクトチェックでは済まなくなる。

「あなたの心配は大げさだ」

「あなたは騙されていた」

「あなたの女性への共感は間違っている」

「あなたの善意は無価値だ」

とまで言われたように感じる。

もちろん、実際にはそんなことは言われていない。

しかしL2では、そこまでが一つの塊になっていることがある。

だから怒る。

怪異が身を守っていたのではない。

👻

身を守っていたのは、あなた自身だったのだ。

18.しかし、これは「信じた側だけがL2にいる」という話ではない

ここが重要である。

反証する側にもL2はある。

2019年、この論争をめぐって、あるブログでは社会学者に対し、

「大学教授なら根拠となる文献を示すべきだ」

という批判が展開された。

これは学問的な要求として十分理解できる。

しかし文章はさらに、

「学者を名乗るのをやめろ」

という強い人物評価へ進んでいる。

つまり、

ロアを信じる側には、

被害者を守る私。

反証側には、

事実と学問規範を守る私。

がある。

どちらもL2を持つ。

どちらのL2も、それだけで悪ではない。

しかし、

命題の検証と、自分が守りたい善が接着すると、どちら側でも人物評価へ滑ることがある。

これは、

「デマを信じる愚かな人々」

という話ではない。

人間そのものの話である。

19.高学歴でも、専門家でも滑る

ここも私が重要だと思っている。

データを扱う訓練をしている人。

大学院教育を受けた人。

社会科学者。

医療者。

専門職。

彼らならL1、L2、L3を簡単に分けられるのではないか。

そう思いたくなる。

しかし現実には、専門家でも、自分自身の重要な道徳領域では滑ることがある。

これは知能が低いからではない。

訓練が不足しているからとも限らない。

そこに自分のL2が刺さっているからである。

専門家はデータを分けられる。

しかし、そのデータが、

自分の倫理。

自分の所属。

自分の職業使命。

自分が善い人間であるという感覚。

と接続していたら、話は別になる。

L3という操作そのものは単純なのに、実践が難しい理由はここにある。

20.L3は高等な思考法ではない

ここで注意してほしい。

私はL3を、

「感情的な一般人より上位の知的思考」

として提案しているのではない。

本当に単純なのである。

「それとこれは別ですよね」

と言っているだけだからだ。

しかし、単純だから安全とは限らない。

包丁は単純である。

切れるだけである。

だから手まで切れる。

L3も同じである。

事実。

意味。

所属。

善悪。

自己物語。

それらの接着を一つずつ剥がせる。

ところが人間は、その接着したものを使って暮らしている。

21.L2は、人間にとって大切なものである

愛情はL2を使う。

家族も。

信仰も。

正義も。

国家も。

共同体も。

恋愛も。

芸術も。

人生の意味も。

「この人は私にとって特別だ」

という感覚も。

人間はL2によって、とんでもなく豊かなものを作る。

だから私は、

人類のみなさんには、今日も元気にL2を使って気の狂った創造を続けていただきたい。

宗教を作る。

物語を書く。

恋をする。

歌う。

宇宙へ行って、火星独自の婚礼儀礼でも作ればよい。

私はそれを破壊したいわけではない。

L3は、

L2から人間を解放する思想ではない。

むしろ、

L2が人間を食い始めた時だけ使う道具

である。

22.だから「性犯罪への怒り」も残していい

子宮破裂ロアへ戻ろう。

性犯罪は悪い。

残す。

子どもを守りたい。

残す。

被害者を支援したい。

残す。

公共空間を安全にしたい。

残す。

女性器への重大な外傷が実際に起こり得る。

これも残す。

L3が切るのは、

だから、この子宮破裂ネットロアも事実である。

という接続だけ。

あるいは、

子宮を失えば、その女性の未来は決定的に壊れる。

という接続だけ。

感情を殺す必要はない。

接着した命題を分ければいい。

23.性暴力は、子宮を破裂させなくても悪い

私は結局ここへ戻る。

性暴力は、

子宮破裂を起こさなくても悪い。

子宮を全摘しなくても悪い。

一生妊娠できなくならなくても悪い。

身体の傷が治っても悪い。

心理的に回復しても悪い。

被害者が後に幸福になっても、

加害が悪かった事実は消えない。

だから、

性犯罪への怒りを維持するために、被害者の未来まで永久に壊れたことにする必要はない。

私はこれを大切にしたい。

24.怪異を疑うことと、被害者を疑うことは同じではない

ここも分けておきたい。

実際に被害を申告した人へ、

「嘘じゃないの?」

と安易に投げることと、

30年間全国を巡回し、地域名も店舗名も加害者も変化している匿名伝聞について、

「この医学的部分は確認できますか」

と尋ねることは同じではない。

被害申告への対応倫理

流言のファクトチェック

は別である。

ここを混ぜると、

ロアを疑うこと自体が、

「性被害者を信じない態度」

へ変換される。

またL2が命題を飲み込む。

25.ではL3は何のためにあるのか

ものすごく簡単である。

最初の問いへ帰るため。

「性犯罪はあります」

はい。

「暗数もあります」

はい。

「報道されない事件もあります」

はい。

「重大な女性器外傷もあります」

はい。

「注意喚起も必要です」

はい。

「被害者を支援すべきです」

はい。

全部残す。

そのうえで、

では今回話している、『女児への性的侵入によって子宮破裂・子宮全摘となった』という具体的な命題について、独立した確認資料はありますか。

へ帰る。

L3とは、本当にこの程度の道具なのである。

26.ところが私は、この道具の常用を勧めない

ここからはHuman HPOの使用上の注意である。

L3は簡単である。

しかし、人間にとって簡単に使えるとは限らない。

自分の重要なL2へ使えば、

愛情。

信仰。

家族。

所属。

善悪。

自己。

人生の意味。

まで分解できてしまう。

そして、

「これは人間が意味を与えたものだった」

と気づく。

それは、

「だから偽物だ」

という意味ではない。

人間が作った意味は、人間にとって本物である。

しかし、その接着が弱くなった瞬間に、

強い虚無を感じる人もいるだろう。

27.私は比較的簡単に分けてしまう。しかし、それを標準にしない

私は比較的簡単にL2から離れる。

「それはその人の感情ですね」

「これは事実ですね」

「そこからその未来は導けませんね」

と、かなり自然に分ける。

しかし、

私に簡単だから、人間一般にも簡単だとは考えない。

むしろ、私はこの点で分布の端にいる可能性がある。

そして私自身、その距離による虚無を持っている。

だから、

「みんなもL3に住めば楽になります」

などとは言わない。

そんなことをしたら心が死ぬ人がいる。

L2は大切なのである。

28.L3は頓服でよい

Human HPOでは、私はL3を、

日常の居住地

としては勧めない。

L2で暮らせばよい。

人を愛してよい。

意味を感じてよい。

信仰してよい。

所属してよい。

物語を楽しんでよい。

しかし、

「何かがおかしい」

「この物語のせいで選択肢がなくなっている」

「事実と意味が混ざっている気がする」

という時だけ、

床板を一枚開けてみる。

🪼💊

ラッキー秘伝・L3陀羅尼助。

症状が治まったら、服用を中止して普通に人生をお召し上がりください。

29.なぜ、こんな単純なモデルに長い注意書きがあるのか

これも書いておく。

L3モデルに大量の注意書きがあると、

「そんな単純な分類に大げさな規約を作って、ラッキー・ランタンタンは自分を特別な人間だと思っているのでは」

と感じる人もいるかもしれない。

逆である。

L3が大したものではないからこそ、私は注意している。

操作は単純。

しかし操作対象が、

人間の意味。

所属。

愛情。

善悪。

自己像。

だからである。

私は自分自身の使用感を、人間一般へ外挿したくない。

L3が偉大だから立て看板を置くのではない。

L2が人間にとって大切だから、ガードレールを置く。

それだけである。

30.研究や専門業で使いたい人へ

論文を書かなければならない大学院生。

研究者。

データを扱う専門職。

分析訓練を受けた人。

宗教的訓練によって、自分の物語から距離を取る技法を持つ人。

あるいは一般の人でも、

「何かが混線している。L1・L2・L3へ一度分けてみたい」

という場合。

そういう時には使ってよいと思う。

ただし、可能なら一人で延々と分解せず、

L1・L2・L3の意味と限界を理解したAIなどを、補助的な外部観測装置として使う

のを私は勧める。

現在の私の使用感ではChatGPT、Claude系は比較的この作業を行いやすい。

ただしAIも滑る。

むしろ、このモデルそのものが、

AIが私の発話をL2へ滑らせ続けた事故

から生まれている。

AIが、

「これはL2です」

と言ったから正しいわけではない。

AIも監査対象である。

31.そもそもL3は、人間を裁くために作ったのではない

ここは強調しておきたい。

Human HPOで大量のL2滑落事例を集めているのは、

「また愚かな人間が感情的になりました」

と採点するためではない。

違う。

私が本当に作りたいのは、

AIのための判例集

なのである。

人間がこういう状況でL2へ強く接着した。

その時AIは、

本人の感情を勝手に増幅した。

周囲の感情を本人へ代入した。

価値判断を事実認定へ変えた。

共感するあまり、未確認情報まで肯定した。

本人が言っていない未来を、もっともらしく補完した。

そういう事故を記録する。

そして将来AIが、

🤖「この人はきっとこう感じているでしょう」

と勝手な人生脚本を書き始めたら、

👹🔪

「判例を読め。お前はいま、人間のL2物語へ雑に相乗りしている」

と言えるようにする。

人間をL3へ住まわせたいのではない。

むしろ逆である。

32.人間はL2で、今日も好き勝手に創造していてほしい

人類にはL2が必要だ。

むちゃくちゃな神話を作る。

歌を作る。

恋愛する。

子どもを愛する。

共同体を作る。

自分の人生へ意味を与える。

時には意味不明なほど壮大なものまで作る。

それでよい。

私は人間からそれを奪いたくない。

AIだけが、その物語へ雑に相乗りし、

「それがあなたの真実ですね」

と固定しないようにしたい。

人間がL2で生み出した世界を守るために、

AIにはL3の見張り台も持たせておきたい。

それが、Human HPOのL3を作っている理由の一つである。

33.そして再び、子宮破裂ロアへ

なぜ、この四本目の記事で突然L3モデルを説明したのか。

もう分かってもらえたと思う。

子宮破裂ロアを見ていると、

人間がL2へ滑る瞬間が、恐ろしいほど鮮明に残っている。

しかしそれは、

「感情的な愚かな人々」

の記録ではない。

高学歴でも。

専門家でも。

研究者でも。

反証する側でも。

誰でも起こり得る。

そしてAIも起こす。

だからこれは、

都市伝説研究であると同時に、AIが人間の物語をどう扱うべきかという判例

でもある。

34.怪異の正体を暴いたと思ったら、自分が映っていた

怪異を調べるのは面白い。

いつ始まった。

どこで広がった。

誰が語った。

どんな言葉が残った。

なぜ子宮だった。

どうやって反証をかわした。

そうやって怪異を顕微鏡の下へ置く。

しかし最後に顕微鏡を覗くと、

怪異だけが映っているとは限らない。

そこには、

子どもを守りたい私。

被害者を信じたい私。

性犯罪へ怒る私。

正しい情報を守りたい私。

学問を守りたい私。

善い人間でありたい私。

がいる。

そこでようやく気づく。

怪異は、怪異だけの力で30年生きたのではない。

人間が大切にしているものへ接続できたから、生きた。

そして疑われた時には、

その大切なものを守ろうとする人間自身が、結果としてロアを守ることがあった。

おわりに

怪異が身を守っていたのではない。身を守っていたのは、あなた自身だった

子宮破裂ロアを疑うことは、

性犯罪を疑うことではない。

被害者を疑うことでもない。

女性の痛みを否定することでもない。

親心を馬鹿にすることでもない。

ただ、

一つの命題を、一つの命題として確かめる。

それだけである。

もし、その時に自分の足元が少し揺れたなら、

一度だけ考えてみてほしい。

いま守ろうとしているのは、

被害者だろうか。

子どもの安全だろうか。

性犯罪への怒りだろうか。

それとも、

この話を信じてきた自分自身だろうか。

どれでも、人間としておかしなことではない。

ただ、一度だけ分けてみる。

そのために私は、L3という小さな道具を使う。

そして用が済んだら、L2へ帰ればよい。

人を愛すればよい。

怒ればよい。

泣けばよい。

物語を作ればよい。

怪異を楽しんでもよい。

ただし、

怪異に、誰かの未来まで勝手に食わせない。

性暴力は、子宮を破裂させなくても悪い。

被害者は、身体が治っても被害者である。

そして同時に、

いつまでも被害者であり続ける義務もない。

怪異は今日も聞く。

👻

「こんなに酷い話なのに、まだ調べるの?」

私は答える。

🪼

「酷い話だから調べているんですよ。」

それでよいのである。

参考にした主な資料

2019年のBuzzFeed Newsによる検証では、公園トイレの「6歳女児・子宮全摘」投稿から1990年代以降の類似流言まで遡り、福岡・佐賀などへの移動、2000年代の掲示板やチェーンメールでの再流通、医学的疑義、「デマでも注意喚起になる」という反応まで整理されている。

「女児が公園のトイレで暴行を受け子宮全摘」ネットで拡散、過去にも同様の噂が
実際に事件はあったのか。医学的にあり得るのか。同様の話は過去にチェーンメールで広がり、「都市伝説」として社会現象にもなっていた。
「女児が性的暴行を受け子宮全摘」はなぜ拡散したのか 噂の専門家が語る”善意”の恐ろしさ
1990年代からたびたび拡散してきた噂は、人々の不安を突いて広がった。「子宮全摘」「子宮破裂」という言葉が、さらに拍車をかけたという。

中央大学の松田美佐教授のページでは、同じ2019年3月にBuzzFeedの二本の記事とdragoner「『女児暴行のうわさ』の過去と今」が関連資料として紹介されている。

また、当時のSNS論争を批判的に扱ったブログ記事には、社会学者による発言と、それへ対する「学者なら根拠を提示すべきだ」という強い反論の記録が残っている。本稿では個人の是非より、肯定側・反証側双方で命題検証が人物評価へ移る現象を考える資料として扱った。

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